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沖縄、浦添消防署は、丘の上にある。
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それから五日後。 別の会場で開催した絵を描く会に「私の描いた、消防自動車の絵を見て下さい」と、写生に参加した親子が飛び込んできた。 小学三年生の女の子は、四つ切半分の画用紙、母親は四つ切大の画用紙。小学生の絵は、額縁に入っている。 「わあ−スゴイー」「上手!」「どうして、こんなステキな絵ができちゃったの。私も参加すればよかった!」と大騒ぎ。母親もうれしそうだ。小学生は、全身ニコニコして目は輝き、ふっくらとした体は、誇りに満ち満ちている。 「あの写生会のあと、この子はどこへ行っても、誰に会っても、この絵の話ばっかり。学校へ行っても、先生に会っても。そして、作文にも書いたのよ」 「絵なんて描いたことのない私にも出来たんですよ。うれしくって」と、お母さん。 「いいわね、どうやって描くの? えっ、赤い画用紙に描くの? それにしても、どうして赤い画用紙にしたの?」 十二、三人の賞賛をあびて、幸せそうにしている母子を見て、涙がこみ上げてきそうになった。 栄養不良のような、あの女の子のことを思いだしたからだ。
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○彼女のメッセージ 丁度、季節は冬。二月である。
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その感想文を見て、アッと思った。そこには、宇宙語としか思えない文字が並んでいた。 「あとみもにりょくみないこんうきる・・・」。一つの文字は正確なのだけど、単語になっていない。一つの文字の練習のようだ。彼女は文が書けない人だったのだ。それなのに、一生懸命知っている字を並べてくれた。 涙で字が読めない。でも、私は読まなければならない、わからなけれぱならない、彼女のメッセージを。 五月のゴールデンウイークが過ぎた頃に、その学校では、全校生徒による消防自動車の写生会が行事として入っていた。小学四年生以上の五百人の生徒の責任者が私だ。 今までの図工(植物や動物、人工物である「毛糸の帽子」)は、彼女にもちゃ−んと描けた。でも「自動車の写生」は、彼女には無理だろうと思った。 全校写生大会は、職員室から丸見えの校庭で行われる。五百人もの生徒相手なので、彼女につきっきりで教えることは無理だろう。先生にも友達にも、彼女が描けない子だと知られたくない。 そこでひらめいたのは、赤い画用紙を使うということだ。赤い画用紙なら、遠目では絵を描いているかどうかわからないだろう。白い画用紙だと、描いている人と、そうでない人がわかってしまう。かくして、五百人の生徒達の赤い画用紙が校庭に舞い、赤い消防自動車によく似合い、楽しい雰囲気になった。 おまけに、その時に描いた絵は、コンクールに大量入賞した。 あの子は今、27才のはずだ。文字が書ける人になったのだろうか?文字が書けなくても、そのやさしさで、きっとまわりを幸せにしているだろう。 もし、彼女に再会できたなら、きっと私とこう言うだろう。 〈あなたのおかげで、多くの人が絵を描ける幸せを味わっているのよ。自信を持って生きていこうね〉と。 今では、消防自動車は赤い画用紙に描く。キミ子方式の定番になった。 〔新刊『三原色のフィールドノート』「・風景画」(山海堂)に、カラーで描き順が載っています。) |
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