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長崎市で美術館を見たあと、佐々町で待つ友人宅へ向かうために車を走らせた。
道路は長崎競輪のために渋滞していた。その車の運転は、この夏にコロンビアへ絵を教えにいく仲間の伊達さん。運転しながら、助手席にいる人と、パリへ旅行した時のことを話していた。
伊達さんの泊まっていたホテルの部屋にドロボーが入り、ハンドバックを盗まれたことを身ぶり手振りでおもしろおかしく話していた。
後部座席の私は、ウトウトと居眠りをはじめた。
とつぜん「シラクに・・・」という言葉が、前座席から聞こえてきたような気がした。私は「エッ?」と起きあがって、上半身を前座席へのりだしゆっくり聞いた。
「今『シラク』と聞こえたようだけど、フランス大統領のシラクのことですか?」
「そうよ」と伊達さん。
「パスポートを盗まれたわけだから、いよいよ困ったらシラクに頼もうと思ったのよ」
私はビックリしない。
どんなことがあってもビックリしないクセを身につけている。そこで彼女にまた聞いた。
「どうして、シラク大統領と伊達さんが関係あるの?」
話によると、シラク大統領は大の相撲好きで、日本に何度もお忍びで相撲見学に来ているそうだ。その時に案内をするのが、相撲協会理事長の佐田山。佐田山は伊達さんと同じ高校の同窓生で、佐田山は同窓会には必ず顔を出し、仕事の疲れをいやし、リラックスされるそうだ。シラクと親友の佐田山に、高校の同窓会長を通じて頼めばパスポートがなくてもパリを出国できるのではないかと考えたというわけだ。
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