梅雨時期の六月、キミコ・プラン・ドウに、近くに住む駒場クラス生の関さんが、訪ねて来ました。
 「先生、布に絵を描くことって出来ますかね?」というので、昔、布に描ける絵の具が売ってたな~と思いながら「そういう絵の具があるみたいよ」と答えながら、今度はどんな企画を持ってきたのかなと、次の言葉を待ちました。すると
 「私たち仲間が集まって〈こまばリサイクルの会〉をしていて、今度、目黒区環境学習推進モデル事業として、駒場東大前駅の商店会と組んで、商店会の通りにペナント(旗)に、子どもたちの絵を描いて作りたいんですよ。ぜひ、キミ子方式で描いた絵で、ペナント作り、手伝って下さいよ」と頼まれました。
降って湧いたイベントの講座だけど、なんか新しい事って楽しいので、「じゃ、布に描ける絵の具とか考えておくわ~」といって別れました。
 それから、しばらくして、何となくだけど「旗に絵を描く」っていうのに、違和感を感じていました。
 キミ子方式は、いつでも〈作品を中心に考える環境作り〉が、一番大事。なので、フラッグ(旗)に絵を描く、決まった大きさの中に絵を描くことが、キミ子方式の本質からズレているから、何となくシックリ来なかったのです。でも、仕事は引き受けてしまったし、関さんグループは着々と準備を進めているし・・・。
そこで、閃いたのです。絵は、普段通りにキミ子方式で、画用紙が足りなくなったら足し、余れば切って作品を主人公にして仕上げる。その後、その作品をデジカメで撮る。そして、アイロンプリントが出来る印刷用紙にプリンターで作品の写真を印刷する。フラッグにアイロンでそのプリントされた作品を貼り付ければ、作品自体はいつものキミ子方式です。我ながら、いいアイデアと、関さんに話すと、関さん自身も駒場クラスの生徒なので、すぐに納得してくれて、アイロンプリント用紙の予算をどこから捻出するかと悩んでいました。
 七月末、実施当日、三〇名の近所の子どもたちが集まりました。中には、駒場クラスの生徒さんも何人かいます。
 夏をいったら〈ひまわり〉。大輪のひまわりがプリントされたフラッグが、駅前商店街に揺らめいている風景って、いいなと考えて、モデルは〈ひまわり〉。
 絵を描く時間は二時間と聞いていたので、モデルの用意も考えて、二人で1本のひまわりを真ん中に置き、左右から見て描きました。

 三〇人いたら、三〇種類の大きさも、色合いも違う作品ができて、子どもたちのテンションな上がります。みんなで一旦記念撮影をして、昼食の時間。
 ここからが、ボクの仕事です。三〇枚の作品をデジカメで撮影して、それをパソコンに取り込み、一枚ずつ色調を調整して、背景を白にして、アイロンプリント用紙に印刷。それを三〇枚。
 昼食もそこそこに、作業に入って、プリントが終わった順に、フラッグにアイロンで焼き付けます。一枚のフラッグに一枚の作品だと、少し寂しいので、一枚に二人の作品を焼き付けて、フラッグが完成しました。
 後日、その商店街に行くと、みんなが描いたひまわりがフラッグになって風にはためいてます。そのひまわりの絵を見ながら、描いている時の真剣な顔つきや、出来上がったときの笑顔がよみがえってきて、また違った意味合いの観賞をしながら、商店街を散歩しました。